
統合失調症
統合失調症
幻聴や妄想といった症状が現れるほか、考えや気持ちにまとまりがみられない行動を特徴としているのが統合失調症です。患者さんには、思春期から40歳くらいまでの方が多く、日本人のおよそ100人に1人の割合で発症すると言われている心の病気です。
同疾患は、脳の神経ネットワークにトラブルが生じるとされる脳の機能障害で、先天的にストレスに対して脆さがあるとされる方に限度以上のストレスがかかることによって、脳内神経が異常をきたして発症するのではないかとも言われていますが、完全に特定されたわけではありません。
また発症によって見受けられる症状では、主に幻覚や妄想といったものがみられ、それに関連して様々な症状が現れるわけですが、大きく陽性症状、陰性症状、認知機能障害に分類されます。
陽性症状
陽性症状とは、脳の活動が過剰に起こることで生じる症状です。主に「幻聴や幻覚」、誰かに監視されているなどの「妄想」、周囲の人が自分を攻撃しようとしている等と思い込む「被害妄想」などがあります。
陰性症状
脳の機能が低下することによって、日常生活への関心が希薄したり、感情表現が乏しくなります。主に、喜怒哀楽が少なくなる、家族や友人との交流を避け会話をしなくなる、仕事や勉強、趣味などの興味を失うなどの症状があります。
認知機能障害
思考や判断力が低下してしまい、記憶力や判断力の低下、注意力・集中力が低下してしまい、会話の内容が理解しづらくなってしまう場合があります。
統合失調症の原因は明らかではありませんが、いくつかの要因があるのではないかと考えられています。
脳のドーパミン仮説
統合失調症は脳をはじめとする神経系の機能に障害が起こる病気ではないかと言われています。精神に関する各部位が機能しないことで、精神状態が正常に保たれなくなります。細胞間の情報伝達の役割を果たす神経伝達物質にはさまざまな種類があり、特にドーパミンやセロトニンなどが統合失調症の発症に関係があると考えられています。ドーパミンとは感情や性格などに関係する神経伝達物質です。このドーパミンは、過度なストレスや不安を感じたときに働きすぎてしまいます。その結果、脳内の情報伝達が阻害されてしまい、統合失調症を発症するのではないかと言われています。これは、ドーパミンの働きを活性化させる薬物が統合失調症に似た症状(幻覚・妄想など)を引き起こすことから、ドーパミンの過剰が関係していると予想されました。
ストレス・脆弱性仮説
ストレス・脆弱性仮説は、様々な要因が積み重なり発症するのではないかと考えられている仮説です。遺伝的、脳のトラブル、性格や気質などといった元々の要因がある「脆弱性」に、環境やライフイベント、病気といった日常で感じるストレスが重なり発症するのではないかと考えられています。
この他にも、遺伝的な要素がある、母親が妊娠・出産時に低酸素症を伴う合併症などの説が唱えられていますが、はっきりとした要因は解明されていません。
統合失調症の治療には、薬物療法、心理療法、生活支援が組み合わされます。
まずは薬物療法と心理療法の併用をすることで、症状のコントロールを行っていきます。
薬物療法
統合失調症に用いられる主要な薬剤は「抗精神病薬」と呼ばれます。抗精神病薬の作用には幻覚や妄想などの陽性症状を改善する作用、不安感や不眠などの症状を改善する作用、感情や意欲の低下などの陰性症状を改善する作用など様々な作用があります。そのため、患者さんそれぞれの症状に合う薬を適切に処方するにはある程度の試行錯誤が必要となります。実際に抗精神病薬を服用した患者さんは「余裕が生まれた」「1つのことに過敏になることがなくなった」などの声がありました。このように、薬を服用した感覚として、気持ちが楽になり、リラックスした状況になれることが多くあります。
抗精神病薬には再発予防効果もあります。統合失調症は再発しやすい特徴があり、薬物治療で一旦症状が改善しても、その後も服薬を継続しないと数年で60~80%の患者さんが再発してしまいます。しかし、統合失調症の症状が改善した後も薬物治療を継続することによってその再発率が減少することがわかっています。そのため、自己判断で服薬を中止せずに主治医と相談することが大切です。
心理療法、生活支援
上記薬物療法に合わせて、心理療法で病気への理解やサポート、妄想や不安に対する対処法を学んでいき、少しずつ仕事や社会復帰ができるよう支援させていただきます。
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