
強迫性障害
強迫性障害
自分の意思に反してある考えが頭に浮かんで離れず(強迫観念)、その強迫観念で生まれた不安を振り払おうと何度も同じ行動を繰り返してしまうこと(強迫行為)で、日常生活に影響が出てしまう状態をいいます。例えば、手が不潔に思えて過剰に手を洗ってしまうことや、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないといったことがあります。以前は、不安を主症状とする精神疾患である不安障害の一種とされていましたが、不安や恐怖よりも嫌悪感や道徳心と結び付いている症状が多いことから、現在では不安障害から独立した思考や行動の病気に分類されています。
代表的な強迫観念と強迫行為の内容として、次のようなものがあります。
原因や発症に関わる強迫性障害特有の要因は特定されていませんが、対人関係や仕事上のストレス、妊娠や出産などのライフイベントが発症のきっかけとなっている傾向があります。これらストレス状況と強迫性パーソナリティ(規則や手順、形式にこだわり、融通がきかない状態)の性格や心理的要因との相互作用により、発症に至るものと考えられています。
薬物療法と認知行動療法があります。
薬物療法
薬物治療の第一選択はSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬として使われる薬です。SSRIは即効性に欠け、有効用量を飲み始めてから効果が出てくるまでに最短でも2週間から3週間、最長で8週間を要します。それを聞くと即効性のある抗不安薬の方が優れているように思われるかもしれませんが、SSRIは効き始めると十分に効果が持続し、依存性も低いため第一選択として推奨されています。SSRIの副作用として最も多いのは吐き気、下痢などの消化器症状になります。
認知行動療法
認知行動療法では、曝露(ばくろ)反応妨害法が代表的です。これは、強迫観念による不安に立ち向かい、強迫行為をしないで我慢するという行動療法です。例えば、汚いと思うものを触って手を洗わないで我慢する、留守宅が心配でも鍵をかけて外出し、施錠を確認するために戻らないで我慢するなど、強迫症状を引き起こす刺激に自分をさらしていきます。こうした課題を続けていくことにより、これまでずっと強かった不安が次第に弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくてもよくなっていくという流れです。強迫性障害の人は、恐怖の対象となる刺激(トリガー)に遭遇することで強迫観念が呼び起こされ、それを打ち消そうと強迫行為を繰り返すようになります。ただ、強迫行為をしても強迫観念が消えるほどの効果は持ちません。一時的にほっとするような安心感を味わうために、強迫行為で打ち消そうと努めるものの、安心感は薄れていくので強迫行為を延々と何度も行うようになります。曝露反応妨害法はこの負の連鎖を断ち切るために生まれた治療法であり、大きな効果を持つことが実証されています。烏丸御池かねみつメンタルクリニックでは、認知行動療法は主に心理士が行います。
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